私は二人の姪(凉、芽)と一緒に住んでいる。現在、私と母と姪二人という女ばかりの四人家族だ。この家に住んでいると必然的に川柳をやらなくてはならないのだが、正直、姪二人が本当に好きで川柳をしてくれているのか心配だった。なぜなら、私が留守にしている時に句会を欠席することが多々あったからだ。
「ネエタンが留守の時こそ句会に行ってよ!」 と、何度言ったことだろう。だが「しなければならない川柳」は決して楽しいものではない。旅行しながら一緒に遠出していた大会は軒並み誌上大会になり、旅行の楽しみも無くなってしまった。私は子供達には川柳を嫌いになってほしくないとずっと思っている。凉と芽がいつか作句しなくなってしまうのではないかと心配しているのだが、二人はそんなことはつゆ知らずのほほんと締切間近の投句用紙を横目にYouTubeを見ている。果たして「わかば川柳会」と「卑弥呼の里川柳会」をこの子達が続けてくれるだろうか。いや、逆に私の代で終わらせなければ、こんなに大変な思いをこの子達にさせるわけにはいかない、そんな葛藤の中で日々過ごしてきた。
先日、凉の高校の三者面談があった。そこで、学校のことや部活動のこと、進学のことなど先生とじっくり話し合った。ふと先生の机を見ると、凉が書いた自分の将来設計が置かれていた。家では何度聞いても「ん~大学とか行ってみたいけど、夢が無かとさ。だけんどこに行けばいいか分からん」と言っていたくせに、しっかりと書かれているようだった。気になって先生に「その紙、見せてもらえませんか?」とお願いした。すると将来の夢の欄に「川柳を教えたい」と大きく書かれていた。
泣きそうになる気持ちを抑えて、隣に座っている凉に「そんなこと思いよったと?」と小声で聞く。凉は「うん。せっかく川柳しよるし、家族で出来るやん」と照れくさそうに答える。先生から「ご家族で川柳をされていることは知っていましたが、川柳を教えることで生活はできるのですか?」という直球の質問をされたが「厳しい世界ですが、できます。これからは、もっとそうなるように私も頑張りたいと思っています」と堂々と答えた。当事者の凉の瞳よりも、そう答える私の瞳の方がずっとキラキラしていたことだろうと思うと恥ずかしいが、「川柳を教えたい」という凉の一行に、私は大きな大きな勇気をもらった。きっと芽も、凉と同じ気持ちだと信じている。真島家の未来は明るい。
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