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初恋抄(11)久美子、初めての句集の序文2020年4月4日掲載

新型コロナウイルスの影響で大会も句会も中止。本当なら今頃は、吉野ヶ里大会でお土産に配布する筍の様子を心配している頃だ。吉野ヶ里大会は中止にしたのだからもっと時間に余裕が出来てもいいはずなのだが、この忙しさは何だろうか。新聞もテレビもコロナの話ばかりでみなさまも「もう聞きたくない!」と言われそうなので新型コロナの話はこれくらいにして、生まれて初めての、句集の序文のことについて書きたいと思う。

数ヶ月前に、文ちゃんから「句集の序文を書いて欲しい」という依頼を受けた。私の悪い癖の一つに「安請け合いをする」というのがある。「え!?句集を出すの!?すごいやん!もちろんオッケーよ!」と答えながら、頭の中では「序文って序文のことだよな…書いたことないやつだよな…」と不安が広がっていた。どんな風に書けばいいのか他の句集の序文を片っ端から読み漁ったのだが、内容云々よりも県の会長など、立場のある人が書いているのが殆どだ。読めば読むほど、なんという恐ろしい話を受けてしまったのだろうかと、大きな後悔が襲ってきた。受ける方も受ける方だが、頼む方も頼む方だとため息が出る。忙しさも相まってなかなか書けないまま時間だけが過ぎていった。

とにかく書いてみようと思い、他の序文を真似て句評を中心に書いてみた。が、それは全く私の書きたいことではなかった。読めば読むほど、「これじゃない」と感じた。悩みに悩んで、文ちゃんに「他の本の序文は句に触れているのが多いけど、私は人間に触れてもいい?」とLINEをすると「もちろん。書きたいように書いてください」という返事をもらい、肩の力を抜いて自分の言葉で書き進めていくことができた。調べてみると、私と文ちゃんは出会ってそんなに長くないことを知る。私と文ちゃんはもう10年以上友達のような気がしていたのだが、初めて会ってから3年ほどしか経っておらず自分でもびっくりした。私は自分で言うのもなんだが人懐っこい性格。しかし文ちゃんは人を寄せ付けないオーラを放っている。仲良くなれないだろうと思っていた人と仲良くなるのは相当な時間が必要だ。必要なはずだ。だから出会って3年しか経っていなかったとは自分でも信じられなかった。

文ちゃんは頭が良くて生真面目で頑固。とにかく自分の意見を曲げない面倒くさい奴。そんな文ちゃんを心から信頼したのは、私の父が亡くなってすぐに沖縄からお参りに来てくれた時だった。文ちゃんは熊本県の日奈久で開催された大会の選者で、福岡空港からの移動の途中に我が家に寄ってくれた。元々父が選者の予定だったのだが、ガンで闘病中だったため父の代わりに文ちゃんが選者を引き受けてくれたのだ(参照:https://youtu.be/GVnQlu0yWRY)。その時文ちゃんと父の思い出を色々と話した。父との最後の旅行は沖縄だったのだが、その旅行にも文ちゃんは同行してくれた。文ちゃんは父のために大粒の涙を流しながら話してくれた。文ちゃんの涙を私は一生忘れない。

私の序文を読んだ人が、森山文切(文基)さんのことを少しでも理解してくれたら、私の苦労も報われると思っている。もうすぐ森山文切句集「せつえい」が我が家に届く。なんだか緊張するが、それがとても楽しみだ。こんな経験をさせてくれた文ちゃんに心から感謝している。


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