十五年前、佐賀県伊万里市にある青嶺中学校に川柳を教えに通っていた。そこは選択授業で、川柳教室か茶道教室を選んで参加するのだが、半数の生徒が川柳を選択していたため、教室はかなりの賑わいだった。 川柳教室では、最初に虫食い川柳ゲームをして、その後お題を出して作句をする。その時間内に入選句の発表までするのだから、あっという間に一時間が過ぎていった。時間が足りなくて入選句の発表途中でチャイムが鳴ってしまうことも多々あったが、子供達の「久美子先生どんまい!」という声援に何度も救われたことを覚えている。 青嶺中学校は私の住む吉野ヶ里町から高速を使っても車で90分ほどかかる。私の家は福岡県寄りで、青嶺中学校は長崎県寄りだ。その時間も楽しめるほど、子供達との触れ合いは楽しいものだった。
先日、その頃の担任の先生から連絡が入った。 「タイムカプセルを開けたら、川柳がいっぱい出てきたとよ。この句をどうしようか迷ったばってん、久美ちゃんに渡すのが一番よかと思うけん、ちょっと見てくれん?」 私は喜んでその句を受け取りに行った。
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真夜中に一瞬見えるほたるの光 イティロー ひまわりが心の梅雨を終らせる あごなしポロリ 桜花心を晴らす雨のよう CHILO 日が暮れてツクツクボウシが泣いている カンチ 頑張ろう勉強部活中体連 MILK 雪げしき溶けても残る心には ホワイトスノー ささの葉に願いをこめて夢を見る キキ・ララ 山菜に目をうばわれる春の山 山の人 息きらしトンボにみとれまた走る 生山葵 梅雨の昼カビたまんじゅう食べれない 極太 春風は新たな色を持ってくる 針葉樹林 スイカわりみんなの声が命綱 スイカのたね
あげていくとキリが無いのだが、十五年前の教室の思い出が一気に溢れてきた。ずっと本名で投句していたはずなのに、この短冊には全員がペンネームを使っている。本当はペンネームが欲しかったのだと切なくなった。 現在、佐賀県内の小学校や中学校へ川柳を教えに行くことが多くなり、ときには一時間目から六時間目までぶっ通しで教室をすることもある。時間配分も上手くなった。この青嶺中学校の子供達との触れ合いが私のジュニア川柳への入口だった。そんな子供達の句を今手にすることができたことは、これからの私の大きな力になることだろう。
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