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初恋抄(30)初音ミク 2021年11月13日更新

 新型コロナの第五波が収まり、会場に集まっての川柳大会が再開されはじめた。柳友たちと会うのは久しぶりだが、みなさん全く変わらず若々しい。変わったのはこちらの方で、少し化粧をしている姪っ子二人に皆が「ちょっと!凉ちゃん芽ちゃん!急に大人になっとるやんね!えーっ!」とビックリされていた。

 二年ぶりの大会。大会はやっぱり胸が高鳴る。長い長い二年だったし、いろいろと環境も変化した。私達の席の近くには、四十代の柳友が二人座っている。それもとても嬉しい。

 入選句を聞きながら、二年前と変わらず、納得したり笑ったり。私は長い間こうやって過ごしてきた。大会の雰囲気も入選句の流れも体に染みついていて、心地よい時間だ。


 しかし、である。


二年前と変わっていない入選句を聞きながら、懐かしさや落ち着いた気持ちになったと同時に、少し期待を裏切られたような、拍子抜けしたような、そんな気持ちにもなった。


「なにも変わっていない」のだ。


新型コロナの影響で全国川柳大会は軒並み誌上大会になった。これは悪いことばかりではなく、普段参加できない全国各地の幅広い句に触れる機会にもなった。私だけでなく選者や大会参加者も同様のはずで、多くの川柳人がこの二年間でいままで触れてこなかった句に触れたはずだ。この二年間が大会の句にどんな変化をもたらすのか、期待していたのかもしれない。

まあそういう私の句だって何も変わっていない。自分の句帳を見ながら「オマエが一番変わってないんだよ!」と、自分に突っ込みを入れたくなる。そんな中、ふと姪っ子の句帳に目をやると、「初音ミク」の句があった。とても面白いと思ったが、選者に通じなかったようで没だった。「初音ミク」が入選するにはまだまだ時間がかかるのかもしれない。と言っても、もうすでに「初音ミク」も古いような気もする。二年もすれば言葉はどんどん変わる。川柳大会だけが、変わらない。変われない。新型コロナというとてつもなく大きな変化があったのにも関わらず、である。

 コロナ禍で過ごした二年という時間は、私の意識を変えた。意識が変わっても句が変わったかと言われれば微妙なのだが…。意識の変化が良い方に転ぶのか悪い方に転ぶのかは自分でもよく分からないが、この二年間自分がやってきたことを決して無駄にしないように、忘れないようにしたい。




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