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初恋抄(31) 凉 初披講 2021年12月7日更新

 12月5日の楠の会の大会で、姪の真島凉(高二)が選者を務めた。凉にとって初めてのリアル大会での披講だった。披講とは不思議なもので、どんなにいい句でも披講の仕方によって台無しになってしまうことがある。選者の責任の大きさを、凉は十六歳にして体験することになった。

凉は我が家の二階で開催している「わかば川柳会」と、佐賀番傘の「むつごろ川柳会」で何度も選者をさせてもらい、選句と披講に少しでも慣れるようにしてきたが、本人はなかなか納得がいかないようで「ネエタン、練習するけん聞いて」と、自分の好きな句集を持ってきて何度も練習をした。その句集は峯島妙さんの「風が吹いている」で、私もお気に入りの一冊だ。何日も練習が続き「なかなか上手になったやんね」と、妙さんの句集を開いてみると、本に直接線を引いたり読み仮名を振ったり、ビックリマークや読み方の強弱まで書き込んでいて驚いた。「ちょっと待て。誰が本に直接書いていいと言うた?」と怒りそうになったが、こんなに一生懸命に練習したのだと思うとなにも言えなかった。凉が頑張って練習した証を消すこともできず、妙さんに「この句集で姪の凉が披講の練習させてもらいました」という手紙を書いた。

 披講前の挨拶で「十六歳の私に、こんな大きなチャンスをくださって感謝しています。天国のじいちゃんが一番喜んでくれていると思います。」なんて言うものだから、会場のみんながウルッときてしまった。だがそれに続いて「卑弥呼の里誌上川柳大会への投句もお待ちしています」と取って付けたように言い、会場が笑いに包まれた。練習していたよりも少し早口になってしまったが、それでも滞りなく披講を終えることができて安心したのだが、問題は私の方だった。披講を終えて笑顔で席に戻ってきた凉を見て涙が止まらなくなってしまったのだ。実は心配で心配で、心臓が口から飛び出しそうだったのだ。泣いている私を見て、凉も安心したのか泣き出してしまって、まるで卒業式かなにかのようだった。二人で「ちょっと泣かんでよ!」と言い合いながら、次の選者の披講を聞いた。

 凉が選者をすることになり、私は選者の責任の大きさに改めて気付かせてもらった。大会を準備してくださったスタッフと向き合い、句と向き合い、作者と向き合う。「選者様」なんて様付けで呼ばれることもあるが、少しも偉くなんかない。ただ、大きなプレッシャーと戦わなければならない覚悟は必要だ。「選者」と向き合い披講をする凉の姿に、自分が忘れかけていたたくさんの気持ちを思い出すことができた。凉に選者を依頼してくださった楠の会の皆さんに、心から感謝します。




閲覧数:195回1件のコメント

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1件のコメント


danseki1962
danseki1962
2021年12月07日

!!!!!!凉ちゃんおめでとう!涙あり、笑いあり、きっといい大会だったことでしょう。

「星に住む計画立てる5時間目」凉

6時間目は何の計画を立てるのでしょう。目が覚めたあと、いよいよ現実的な計画かな。

それはそれでとっても楽しみ。おばあちゃんやネエタンを支え益々BIGになっていくのかな。いや!そのままの勢いで二人をぶっちぎれ凉ちゃん!!


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