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初恋抄(35)川柳をする環境 2022年4月6日更新

 「川柳はペンと紙さえあればできる」と人には言っているが、正直に言えばペンと紙がなくてもできる。自分が経験してきたこと、感じたこと、全てが句になるのだから「心」さえあればできる。…なんて甘いことを言えるのは、川柳中心の私を家族や周りのみんなが応援してくれているからだ。

 結社に所属すれば会費が発生するし、大会に参加するのは時間も交通費もかかる。第一に家族の理解がなければ、趣味の川柳にお金をかけることはかなり難しい。遠方の大会ならば二泊三泊することも当たり前だし、宿泊費も食事代もかさむ。私は川柳にお金や時間を使うことが当然の生活をおくってきたので「川柳に使わないなら何に使うのよ?」という考えで、友人から非難されることもあるのが現実だ。

 知り合いが川柳をやめることになった。私はその人の句やエッセイが大好きで、いつも注目していただけに、すぐに「そんなの絶対ダメ」とメールをした。だが、年金の関係でもう続けられないと言うのだ。心の中では(なんで?遠方に行かない限り、そんなにお金かからんやん!)と思ったが、事情はそれぞれで、立ち入ったことを言うわけにもいかず引き下がるしかなかった。

 そんな中、私が講師をさせていただいている句会の、九十代のおばあちゃん二人もやめることになった。「もう目も見えんし、耳も聞こえん。脳もまったくダメやけん、本当にごめんねぇごめんねぇ」と何度も謝られてしまい、引き止める言葉が出てこない自分の無力さに泣きたくなった。

 私生活では、犬を飼うことになったので、全員で遠方に行くのは無理になると思っていたが、ご近所さんが「川柳大会に行くときは預かるけんゆっくり行ってきて良かよ!」と言ってくれた。それも三軒もだ。こういう繋がりも、両親が作り上げてきたもの。私は自分の置かれた環境が、どれだけ恵まれていることかと思う。

 川柳を続けたくても続けられない人がたくさんいる。そのことに直面するたびに、「私が頑張らないで誰が頑張るんだよ」と自分を奮い立たせている。今の自分ができること、自分にしかできないことを精一杯やろうと思う。



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