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初恋抄(36)川柳葦群十五周年記念大会 2022年5月17日更新

 2022年5月15日、川柳葦群創立十五周年記念大会が開催された。主宰の梅崎流青さんを中心に実行委員会を立ち上げ、それぞれの役割を決めて準備を進めた。私は大会の司会進行を任されていた。

大会まであと三日になった朝、流青さんから電話が入った。「久美子、ちょっと大変なことになった」と言うので、メンバーの誰かが亡くなられたのかと身構えた。だがそこからの話は思いもよらぬものだった。

「新型コロナの陽性反応が出た」

と言うのだ。「ん?ん?誰がですか?」心の準備をしながら聞き直す。「俺だよ!」に、私は絶句してしまった。「ちょっと待ってください。あと三日で大会ですよね。えっと、えっと、間に合いますっけ?」自分でも何を言っているのだろうかと思ったが、どう答えるのが正解なのか全く分からなかった。「大会はオマエに任せる。大会の荷物があるから今から持って行く」「いや、絶対に来ないでください。私が行きます!っていうか、体調は大丈夫なんですか?」と、やっと当たり前の言葉が出てきた。

 夕方、流青さんの家に行き顔を見せてもらうと声が少し枯れているくらいで元気そうで安心した。ものすごく離れた場所から「そこの紙にいろいろ書いているから、それを見てやってくれ。分からないことがあったら電話で。俺は今から隔離ホテルに入るから頼んだぞ」と流青さん。「大丈夫ですから任せておいてください。安心して療養してくださいね。とにかく、安静にしていてください」と返事をして、大きな荷物を車に積んだ。五年に一回しかしない葦群の大会には、遠方からたくさんの方が来られる。私は家に帰ってしばらくしゃがみ込んでしまった。もう中止なんてできないのだから、とにかくやるしかない。当事者の流青さんの方がずっと心配なはずだ。気持ちを切り替えて立ち上がった。

 前日の準備まで、ほとんどの人が流青さんの不在を知らなかったので説明し、私より不安な顔になるメンバーを前に、絶対に自分の不安を見せまいと頑張った。「やるしかない、やるしかない…」と何度も自分に言い聞かせながら、とにかく協力して欲しいと皆にお願いした。

 大会当日はとてもいい天気。雨だと運営に気を遣うことが増えるので天も味方してくれた。役割分担のとおりメンバーはそれぞれきちんと仕事をこなしてくれた。会計を担当してくれた麗子さんも、私が読みやすいようにお祝いリストを作って渡してくれた。文台担当のそう美さんも、初めてなのにきちんと自分で表を書いて完璧にやってくれた。文恵さんもたくさんの作業を引き受けてくれた。さらには大阪から参加の武ちゃん奏ちゃん夫婦も「何か手伝うことがあったらするで」と、最後の最後まで一緒に残って手伝ってくれた。和歌山の木本朱夏さんには急遽流青さんの選の代読を引き受けていただき、メンバー、参加者みんなで助け合って流青さんの不在を乗り切ることができた。

今回、流青さんが大会に参加できなかったのはとても残念で大変だったし、本人も無念だったと思う。でも流青さんがいなかったからこそ見えたもの、感じたものがたくさんあった大会だった。ずっとお客様気分でいろんな大会に参加してきたが、今後は「ただの参加者」ではなく「当事者のひとり」という気持ちで、私にできることをやろうと思う。

川柳葦群創立十五周年記念大会へのたくさんのご参加、ご支援、本当にありがとうございました。


閲覧数:343回1件のコメント

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1 Comment


danseki1962
danseki1962
May 17, 2022

見えなかったものが見えるようになる。いいことですね。

流青さんの偉大さも、再認識されたとおもいます。

それにしても、流青さんの病状が気になります。

無理なさらないように、ご養生くださるように、そしてよろしくお伝えください。

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