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初恋抄(8)佐賀県文学賞2020年1月4日掲載

あけましておめでとうございます。今年も初恋抄によろしくお付き合いいただけたら幸いです。

私の地元、佐賀県では毎年「佐賀県文学賞」が開催されている。私が子供の頃はジュニアの部がなかったので、一般の部に投句していた。「通知表母が無言になりました」という句が小学4年生の時に入選して、とても嬉しかったことを覚えている(現在は小学生の部、中学生の部もある)。

この佐賀県文学賞だが、長年投句しているとどんな句が入選するのか「傾向と対策」という川柳家としては非常に面白くない現実が見えてくる。文学賞用に作句すれば入選するのだ。文学賞用の句が入選して新聞に掲載され、表彰式の様子も地元のニュースで流れる。いつも私は「文学賞用」の句でいただいた賞状を前に「これでいいのか?」と自問自答していた。これが川柳だと胸を張って言える句なのかもしれない。だが、これが「私の川柳だ」と胸を張って言えないではないか。そんな迷いを、毎年ごまかしながら投句を続けていた。

私はこの毎週web句会のみなさんの入選句を見る度に度肝を抜かれる。伝統川柳の中で生きてきた私にとって、毎週web句会の句は本気で入選しようと思っているとは思えないからだ。だが、その句の全てが輝いていて、信じられないほど自由で、その発想も表現も羨ましいとしか言いようがない。だから私も勝負することにした。

私は佐賀県文学賞に初めて「自分が好きな自分の句」を5句投句した。投句用紙を母に渡すと「これで良かと?」と言われたが「今回は好きな句だけ出す。入選せんやったらそいで良か。入選して嬉しか句だけ出すことにしたと」と答えたので、母は投げやりに感じたかもしれない。確かに、投句した後の「一席とっちゃうかも~」という図々しいワクワク感は一切無かった。

結果は信じられないことに「一席」だった。入選してこんなに嬉しいと思ったことは初めてで「え?え!?あの句が一席!?なんで!?」と、訳の分からない言葉を連呼してしまうほど、嬉しかった。自分らしさを認めてもらえることが、こんなに嬉しいことなんだと初めて知ったのだ。もちろん、毎回上手くいくわけではないが、これからも「自分らしさ」を大事に作句していこうと思う。毎週web句会の入選句を見ながら、この気持ちをしっかり磨いていきたい。

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