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初恋抄(9)ヤング川柳2020年2月5日掲載

西日本新聞で「ヤング川柳」というコーナーを担当させていただいている。小学生から高校生まで、毎月約1600句の投句があり、毎週土曜日に入選句16句ずつと私の評が掲載されている。もう10年以上続けているし、毎週なので評にも締切にも四苦八苦しているのだが、子供達の感性に触れながら選をする時間は自分の原点を見ているようで幸せだ。

ある日「ヤング川柳」について、とある学校の先生から手紙を頂いた。「同じ生徒が入選していることが多いので、なんとか他の生徒も入選にしていただけませんか」という内容だった。私は入選句を決めるまでは作者名は見ない。「良い句だけど、この子はこの前入選したから今回は他の子の句にしよう」とか「あまり良い句じゃないけど、最近入選していないからオマケで入選にしよう」などと考えたことはないし、これからもこの姿勢を変えるつもりはない。子供達はみんな一生懸命に作句している。その姿を近くで見ている先生の気持ちはよく分かるのだが、句の良し悪しを度返しして掲載することは、子供達の努力を踏みにじることになりはしないか。学校では道徳の授業などで「平等」を学ぶ機会も多いだろう。私は「ヤング川柳」における「平等」は、みんなが順番に掲載されることではなく、誰の句であっても良い句がきちんと評価されることだと思っている。

手紙をもらったのと同じ頃、私が担当している別の小学校の川柳教室で生徒の一人が私のところに来て、 「久美子先生、私の句はまだ一回も新聞に載ってないよ。そろそろ私の番じゃないの?」 と言った。手紙との偶然に驚いたが、私はその子にこう言った。 「入選するということはとても難しいことよ。上手い子は何回も入選するし、6年間投句し続けても一回も入選できない子もいっぱいいると。だから先生はここで上手になるいろんなヒントを出してるよね?いつか入選するように、先生と一緒に頑張ろうね!」 残念そうなその子の顔を見ながら、私に手紙を書いてくれた先生の気持ちが痛いほど伝わってきた。

このお話は以前西日本新聞にも書かせていただいた。私の想いが伝わっているかはわからないが、変わらず毎月たくさんの投句をいただいている。責任の重さを感じながら、子供達の句と向き合う日々である。

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