我が家は今まで雑種の犬しか飼ったことがない。理由は私が拾ってくるからだ。最近は野良犬がいなくなり犬を拾うこともなくなって、ずっと「血統書付きの犬を飼ってみたい」と言っていた父も亡くなり、犬のいない生活も四年目になろうとしていた。
二年前、青森の大会に参加した。十時開場だったので十時に行くとほとんどの席が埋まっていたので真ん中の空いた席に座ると、私の席の正面が秋田の田久保亜蘭さんだった。亜蘭さんは派手な服にサングラスが特徴で、初対面の人でもすぐに分かる。とてもフレンドリーな方で、二次会では「久美ちゃん!久美ちゃん!」と仲良くしていただけてとても嬉しかった。その会話の中で我が家が犬を探していること、できれば豆柴が飼いたいという話をしたのだが、なぜか豆柴が秋田犬になっていて、生まれたら連絡してくれることになった。
家に帰って家族に話すと、母は「秋田犬って、がばい大きくなる犬やろ?怖くないと?散歩とか女性じゃ無理やなかね?」と前向きではなかったのだが、姪っ子達がもう大喜びで「秋田犬!?ザキトワが飼ってるやつ!?プーチンも飼っとるやつやん!やったー飼おう飼おう!!散歩は凉担当、餌やりは芽担当、ミッコちゃんとネエタンは犬代と餌代担当」と役割分担まで決めてしまう始末。私もいろいろ調べてみたが、調べれば調べるほど、まだ生まれてもいない秋田犬に愛着がわいてしまい、もう犬小屋の大きさや置き場所まで考えていた。亜蘭さんと話して一年半ほど経った先日、亜蘭さんから連絡が入り、私たちは秋田まで犬を迎えに行くことにした。「飛行機で犬だけ送ってもいいんだよ」と言われたが、やっぱり家族になるので迎えに行きたいと思ったのだ。
秋田空港に到着すると、迎えにきてくれた亜蘭さんの車にはもう子犬が乗っていて、すぐにこっちに寄ってきた。名前は亜蘭さんの名前をもらって「アラン」にしようと私は考えていたのだが、姪っ子達が「おもち」と勝手に決めていて、顔を見てどちらにするか考えようと思っていた。だが、顔を見た瞬間に「おもち」に決定。上手く言えないが「おもち」って顔をしている。抱っこをすると急におとなしくなって、もう可愛すぎて可愛すぎて母も私も姪っ子達もメロメロだ。
亜蘭さんの家では、奥様がご馳走を作ってくださり、出てくるもの全てが美味しかった。夢中で食べていると亜蘭さんが短冊を持ってきて「句会やろうゼ」と言う。「んもぉ~味がしなくなるやん!」なんて言いながら、短冊を渡されると書かずにいられないのが私達。全員がお題を出して、封筒回しのように即吟で作りまくった。亜蘭さんがどんな句を作られるのか知っていたので、亜蘭さんの句に触れられることも幸運だ。食事をしていても、車の運転をしていても川柳の話ばかりをする亜蘭さんは、心から川柳を愛しておられるのだと伝わってきた。
おもちは現在三ヶ月の子供なのだがもう十キロ近い体重になり、私の靴もスリッパもボロボロ。本人は甘噛みのつもりなのだろうが、私の腕には歯形がいくつも出来ている。噛むのは子犬の仕事だから六ヶ月までは叱っちゃいけないと亜蘭さんに言われているので、グーパン寸前で我慢しているのだが、秋田犬の成長の早さと力の強さにすでに圧倒されている。私達の川柳にも犬が登場することが多くなり、新しい家族を中心に一日が動いている。
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