先日、句会の会場でK子さんに一枚の紙を渡された。そこには
・ティファール(売り物?)
・バスソルト(お風呂の香りですか?)
と書かれていて、それが何なのかを知りたいのだそうだ。娘さんに電話で聞こうにも、耳が遠くて聞き取れない。この二つを調べる為に新しくカタカナ語辞典を買ったのだが、その辞典にも載っていなかったそうだ。私はK子さんの耳元で大声で説明した。
「ティファールで一番有名なのは電気ケトルよ。その製造元がティファール。象印の魔法瓶なら知っとるよね?その象印は会社名やん。ティファールも会社の名前よ。」
「バスソルトは入浴剤だけど、それでお肌を擦るとスベスベになるんだよ。K子さんも使ったら十歳は若返るけん」
分かったような分からないような顔をしたので、スマホで画像も見せた。そして
「ふ~ん…。若い人はこんなのを使いよるとねぇ」
と言って自分の席に戻っていった。K子さんは耳が遠いので一番前の席に座っているが、それでも聞こえていないのが分かる。だが、必ず句会に参加して一生懸命に聞こうとしている姿勢にいつも胸が熱くなる。そういえば、この句会のメンバーで某添削講座に入会したYさんも「お薦めされていた辞書を全部買ったけど、いっちょん分からんばい。」と言っていた。そんな仲間に「ググれ」なんてとても言えるはずもなく、スマホがどれだけ便利かを説明しても、ガラケーからスマホに変わるならばもう携帯は持たないと言う。重い辞書を持ち歩く人、昔の電子辞書を後生大事に持っている人。そこで進化がストップしている現実。
私の母がスマホに変更したときにも、本当にいろいろ教えた。LINEも何度も何度もシミュレーションして、文字の打ち方も練習した。漢字が分からない時の調べ方も練習した。だが未だに、メールやLINEのアプリに未読のマークが出ると「ここに1って数字の出とるけん消して~」と言いにくる有り様だ。「読んだ?」と聞いても「何を?」だ。誕生日プレゼントはなにがいいか聞いても「字の大きくなる電子辞書が良か!」と言う。
みんなに便利なものを教えて覚えてもらうことももちろん大事だと思うが、私が丁寧に説明しながら進めていくのがベストなのだろう。ときには「そんなの知っとる!」と言われるかもしれないが、「知っているとしても説明する」姿勢が大事なのだと感じている。いまの川柳界の現実の壁の高さに唖然とするよりも、私に出来ることをしながら、みんな一緒にゆっくり楽しんでいけたらと思っている。
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