top of page

初恋抄(40)男女交際禁止 2022年9月29日更新


 今回は川柳ではなく剣道について。

私が高校の頃の校則に「男女交際禁止」というものがあった。生徒手帳に書いてあって、初めて生徒手帳を手にした時はその文字に大人になったような気がして嬉しかった。私は剣道部だったのだが、強豪校なので校則よりも部活の決まり事のほうがずっと厳しかった。朝練・昼練・夕練・夜練と、一日に四回の稽古があり恋愛どころではなかった。「昼練」では、昼休みにも稽古をする。昼食をとる時間がないので三時間目の休み時間に弁当を食べて四時間目終了のチャイムがなるとダッシュで道場に行って稽古。五時間目が始まる五分前に教室に戻るのだが、今考えればそうとう汗臭かったはずなのに、クラスメイトから指摘されることは一度もなかった。友達に恵まれていたのだと改めて思う。

 そんな過酷な環境の中、同じ剣道部のMちゃんに彼氏ができた。誰も恋愛をしていないのでMちゃんの話は聞いているだけでワクワク。だが剣道部内での恋愛だったのですぐに監督にバレた。Mちゃんは二週間の停部となり、レギュラーからも外されてしまった。一日休むと取り戻すのに一週間はかかる。恋愛って簡単じゃないんだと恐ろしくなり、先輩に片想いをしていた私は告白することを一瞬で諦めたのだった。

素振り千本レギュラーの夢がある

恋なんて捨ててしまった竹刀ダコ

面紐を結ぶ瞬間から孤独

 高校生の頃の私の句は剣道だらけ。剣道が好きで続けていたというよりも、目の前の目標に向かってがむしゃらになっていた。遠征、試合、昇段審査。血尿が出ても稽古を休むことがなかったのは、それが私だけではなかったからだ。何人もの友人が退部したが、私にはそんな勇気はなかった。「きついのは自分だけじゃない」という思いだけが私を支えていたのだと思う。

 卒業してからの剣道はとても楽しいものだった。好きなときに稽古をし、きつくなると休む。「寒い」や「暑い」を理由に道場に行かなくても誰からも叱られないなんて天国のようだ。楽しみながら五段も習得。私は佐賀県剣道連盟に勤めていたので筆記試験は満点。実技試験は対戦相手が男性だったので苦戦したが、相手はもっとやりにくかったと思う。

 こうやって剣道のことを書いていると無性に剣道がしたくなる。現在「女子剣撫会」という会を立ち上げて、女子だけの稽古会を開催しているのだが、稽古日が土曜日なのでなかなか参加できないでいる(川柳関係のイベントはほとんど土日)。防具も竹刀も陰干しして綺麗に保管してある。またいつか、あの頃のように本気で稽古をする日が来るだろうか(そんなことしたらアキレス腱が切れるかもしれんけど)。何か新しい目標を作って、みんなと一緒に汗を流したい。




閲覧数:157回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page