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初恋抄(43)句集 2022年12月29日更新

 来年、とうとう私の句集を発刊することにした。実は二十年前にも発刊しようと準備していたのだが、出版社の倒産で頓挫してしまった。その頃考えていたのは、章ごとにページに色をつけて句の雰囲気を変えること。三章に分ける場合は三色の本になる。タイトルも考えていて「私」という安直なものだった。載せようと考えていた句は手元にあるのだが、読み返すと発刊しなくて良かったと思えるものばかり。表紙にするつもりで私の写真を撮ってもらっていたのだが、それを見ても発刊しなくて良かったと心から思う。来年発刊する句集も、数年後にはそう思うのではないかと不安でいっぱいだ。

 なかなか句集を出さない私の背中を押してくれたのは叔父の圀弘兄ちゃんだ。父が亡くなってからは、毎週水曜日に必ず我が家に顔を出してくれるようになった。その度に「久美ちゃん、僕は久美ちゃんを応援するから何でも言うてよかけんね!」と言ってくれていた。その気持ちだけで十分嬉しかったのだが、ある日「これで句集を出して。僕にできることはこれくらいやけん。何も気にせず、何の心配もせず、好きなように立派な句集を出してよかよ。足りないならいくらでも言うてね」と分厚い封筒を渡された。中にはビックリするような額が入っていて「え?え?待って待って。句集出すって言うたっけ?」と戸惑っていると「心配がひとつでも減った方が前向きになれるやろ?僕は久美ちゃんの句集を楽しみにしてるけんね」と笑っていた。

 確かに自費出版は費用が嵩むし、川柳では句集は販売するというよりも配るものだという認識が根強く、私自身もそう思っている。現にこれまで山ほどの句集をもらってきた。私も相当な数をお返ししなければならないと覚悟している。圀弘兄ちゃんの気持ちに応えるためにも、もう立ち止まってはいられない。

 本のタイトルも「私」ではないし、ページの色で句をごまかそうなんてもう思わない。きちんとした形で、圀弘兄ちゃんにも、これまで私を応援してくれたたくさんの人にも恩返しをしなければならない。コロナで中止にしていた吉野ヶ里川柳大会も開催するし、来年は私にとって最高に忙しい年になりそうな気がしている。


          (凉・久美子・芽)



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